灯台の世界
子供の頃、北海道の叔父に、まだ暗いうちから船で釣りに連れて行ってもらったことがある。
船といっても、小さなエンジンが一台の、三人も乗ればいっぱいになってしまうような、ほんとに小型の船だ。祖母や叔父が住んでいたのは、近くの町から車で1時間かかるような小さな町。いわゆる「片田舎」と呼ばれるような小さな町の、小さな小さな港から、その小型の船で海へと繰り出した。
昼間に見る明るい海と違って、目の前に広がる黒い大海原、船べりから覗き込んだ眼下に広がる漆黒の水の世界は、子供心にただひたすらに怖さを感じた。
「板切れ一枚」とはよくいったもので、船底の木の下に、それこそ圧倒的な質量でもって無限に広がっている海に、我が身の小ささと、「生」と「死」を分けている「紙一重」の何かをはっきりと感じたのだった。
そんな中、ふと目に入ってきたのが、岬にすっと立つ灯台とそこから発せられる一条の光だった。
正確に言えば、灯台の姿はぼんやりとしか見えていなかったし、光も一瞬のうちに回ってしまっていくのだけれども、それでも夜の海では、気持ちが良いほどにまっすぐのびる明るい光線は、まさに道標のように見えたのだった。振り向けば、東の空はほんのり明るくなり始めていたとはいえ、まだまだ暗い世界に、それはまさに「一筋の希望の光」となって温かみを与えてくれたのだ。
普段都会に暮らし、真っ暗な海に馴染みがなかった子供は、心の底から「灯台ってなんて頼もしいんだろう。」と思ったものだ。
灯台なんて、堤防に釣りにいった際に目にするくらいの、大きな塔ぐらいにしか思っていなかったのに、それ以来、灯台がすっかり好きになった。
暗い中でもどんなに寒くても、雨でも嵐でも、誰が見ているわけでも誰がほめてくれるわけでもないのに、ただただ世界を照らし続ける灯台の、ひたむきさと健気さと頼もしさに「なんていいんだろう」と思ったのだった。
世界一の灯台
ところで。
日本には、そして世界にはいったいどれだけの灯台があるかご存じだろうか。
岩礁や浅瀬などへの注意を促し航行の安全を守り目印となる灯台は、世界中の海や湖にそれこそ数え切れぬほど存在し、その数の正確なデータはないが、文献やネットなどで色々調べてみると、日本国内には約3,250、世界にはおよそ18,600ほどの灯台があるという。
日本で最古といわれる灯台は、兵庫県明石市の明石港旧灯台(1657年完成)、兵庫県西宮市にある今津灯台(1858年に再建)、神奈川県の「観音埼灯台」(日本最古の洋式灯台・・・ 1869年2月11日(旧暦明治2年1月1日)点灯)、石川県羽咋郡志賀町にある「旧福浦灯台」(日本最古の木造灯台・・・1876年(明治9年)完成。それよりも270年ほど前から篝火がたかれ、夜航行する舟の目印になっていたという。)などが挙げられる。
一方、世界で最古の灯台はというと、スペイン・ガリシア州にある「ヘラクレスの塔」。なんと、今から約1900年前のローマ時代に建築された灯台で、18世紀に改修されてはいるものの、現在も現役で海を照らしているという灯台だ。
また、世界最大の灯台は、というとサウジアラビアのジッダ(ジェッダ)にある「ジッダ灯台」で高さは約133メートル。そのほか、14世紀に起きた地震により倒壊してしまい今は残っていないが、世界最初に建造された灯台ともいわれるエジプトの「アレクサンドリアの大灯台」は紀元前308年~紀元前246年の間に完成したといわれ、高さは134メートルで史上最も高かった灯台としても知られている。
ちなみに日本最大の灯台は、島根県出雲市にある出雲日御碕灯台で、灯塔の高さは約43.65メートルで、石造灯台としては日本一の高さを誇る。
歴史あるレンガ積みや石積みの灯台から、比較的新しいコンクリート製の灯台まで、
世界中で今日も灯台は、暗い海を照らし続け、船の安全を守り続けている。
漁船や、貨物船や、客船の航海の安全を守り、
船に乗る人と、その家族や恋人や友人や知人の平穏な生活を、そして私達の日々の生活を守り続けている。
普段はあまり注目されないけれど、大切な存在。
「縁の下の力持ち」という言葉が似合う、
それでも、やはりなくてはならない存在。
GPSが発達しても、自動操舵が可能になっても、海辺や湖岸に佇み、世界を照らし続ける。
というわけで、今日は、世界の灯台のある風景をお届けします。
見ているだけで癒される
明日にも旅に出たくなる
死ぬまでに一度は見たい
灯台のある美しい風景
灯台のある風景
![](http://world-web-magazine.com/wp-content/uploads/2019/02/A-tranquil-landscape-at-sunrise-in-Wales.jpg)
ポルトガル アルガルヴェ地方サグレス村 サン・ヴィセンテ岬灯台
ブラジル バイーア州サルヴァドール バーハ灯台(Farol da Barra)
デンマーク ユトランドの赤い灯台(Bovbjerg Fyr)
ポーランド ポモージェ県シフィノウイシチェ シフィノウイシチェ灯台
デンマーク ブラヴァンシュク灯台(Blåvandshuk Fyr)
フランス プロヴァンス=アルプ=コート ダジュール サントロペの灯台
メイン州 サウスポートランド ポートランド防波堤灯台「バグ・ライト」
スコットランド キンタイア半島アーガイル・アンド・ビュート キャンベルタウン ダバアー島灯台
![](http://world-web-magazine.com/wp-content/uploads/2019/02/Greens-Point-Lighthouse-Letete-New-Brunswick.jpg)
カナダ ニューブランズウィック州 カンポベッロ島 ヘッドハーバー灯台
スペイン カナリア諸島フエルテベントゥラ島 プンタ・ハンディア灯台
ドイツ バイエルン州シュヴァーベン コンスタンツ湖 リンダウの灯台
ドイツ バイエルン州シュヴァーベン コンスタンツ湖 リンダウの灯台
アメリカ ミシガン州エンパイア ロバートH.マニング記念灯台
アメリカ ミネソタ州シルバーベイ スペリオル湖 スプリットロック灯台 Split Rock Lighthouse
アルゼンチン ティエラ・デル・フエゴ州 ウシュアイア エクレルール灯台
![](http://world-web-magazine.com/wp-content/uploads/2019/02/Marshall-Point-Lighthouse.jpg)
アメリカ ワシントン州ワシントン・コースト ノースヘッド灯台
カナダ ノバスコシア州ハリファックス ペギーズ・コーブの灯台
![](http://world-web-magazine.com/wp-content/uploads/2019/02/391edc00ede5900acde3f37a0990d633.jpg)
イタリア シチリア州トラーパニ サン・ヴィート・ロ・カーポの灯台
イギリス イースト・ライディング・オブ・ヨークシャー スパーンヘッド灯台
アメリカ ミシガン州 セント・ジョゼフ 真冬の嵐で凍りついたセント・ジョゼフ北桟橋灯台
アメリカ メイン州 ケープエリザベス ポートランド ヘッドライト灯台
アメリカ メイン州 ケープエリザベス ポートランド 雪のヘッドライト灯台
アメリカ メイン州 ケープエリザベス ポートランド ヘッドライト灯台
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