オセアニア

タスマニアの風景

タスマニア

北海道に住んでいらっしゃる方や、北海道出身の方、そして、しょっちゅう北海道を訪れる方などをのぞいて、多くの方は北海道の大きさをあまり認識していないに違いない。大きい(広い)のはなんとなく理解していても、あらためて、北海道が四国と九州を足したよりもなお大きいと聞くと驚くだろう。北海道の面積に近づけるためには、九州、四国にさらに沖縄、山口、広島を足さなくてはならないのだ。

その北海道の面積の約八割ほどの大きさを誇る島が、オーストラリアの南にあるタスマニア島。地図上で見ると、面積7,600,000平方キロメートルという広大なオーストラリア本土の下にちょこんと小さな島があるように見えるが、実際には面積90,758平方キロメートル(島としては世界で26番目)の面積を持つ大きな島だ。タスマニアデビルやウォンバットをはじめ、ワラビー、パディメロン、カンガルー、ハリモグラ、ポッサム、カモノハシ、フェアリーペンギン、オットセイ、イルカ、クジラなど、様々な陸上生物、海洋生物が生息している自然豊かな島として知られ、島の全面積のおよそ半分が森林、島の約三分の一が国立公園や自然保護地域になっており、面積にして約1,383,640haが「タスマニア原生地域(Tasmanian Wilderness)」として、ユネスコの世界遺産(複合遺産)にも登録されている。

タスマニアは、一方でオーストラリア本土と同じく、流刑地としての歴史を持つ場所でもあり、英国やアイルランドから数多くの流刑者が流されてきた。その中にはれっきとした重罪人が居た一方、わずか9歳の少年がいたり、今日のような科学的操作方法もなかった時代、ろくな証拠もないままに送られてきた、冤罪の可能性があった人々も含まれていたともいう。「罪人」「囚人」「監獄」というような直接的なネガティブ・イメージは過去のものになったものの、それらに纏わる歴史的な建造物、遺産などが今も残されており、歴史の証人として、訪れるものに何かを考えさせる存在として静かに佇んでいる。

今日はそんなタスマニアの、歴史的な建造物や遺産のある風景と、大自然の風景、そこに棲む動物たちをあわせてお楽しみいただこう。

氷河期に作り上げられた景観を今も見ることができるともいわれるタスマニアの絶景。
世界トップクラスといわれる手つかずの大自然の景観を楽しめるタスマニアの美しい風景。
万人の様々な想いが交錯する歴史的建造物の佇む風景。

見ているだけで癒される風景
時の流れと人の心に思いを馳せる光景

明日にも旅に出たくなる
死ぬまでに一度は見たいタスマニアの風景

タスマニアの風景

タスマニアの基本情報と見所

タスマニア島は、オーストラリア本土から南東に約240キロ、南極まで約2000キロのところに位置しており、人口は約51万人(北海道は約550万人)。南半球にあるため、季節は日本と逆になるが、日本同様、4つの季節があり、夏は12月~2月位まで。気温は平均で21~23度、最低気温が約3度とオーストラリアの中では過ごしやすい場所としても知られる。

主な都市として、島の南東にある州都ホバート、島の北部、峡谷のある美しい町として知られるロンセストン(Launceston)があるほか、北西部の海岸部にはデボンポート(Devonport)やフェアリー・ペンギンの棲む海辺の町バーニー(Burnie)、ホバートから南に車で30分のケタリング(Kettering)などがある。

タスマニアの魅力は、オーストラリア本土とは大きく異なる自然や風景で、手つかずの原生林が残る山や、冬には雪を抱く山、美しい湖など、見どころが沢山ある。そのいずれへもアクセスが容易なのも魅力で、日帰りのトレッキングから数日かけて大自然の中を歩くトレッキングまで、旅のスケジュールや体力、経験に合わせた様々な自然の楽しみ方が出来る。

クレイドル・マウンテン / セントクレア湖国立公園


ロンセストンから車で約2時間ほどの場所にあるのが、タスマニア/オーストラリアでも指折りの絶景を楽しむことができるといわれる「クレイドル山=セント・クレア湖国立公園」。正確には「クレイドル山国立公園」と「セントクレア湖国立公園」からなり、その広さは、東京都の約3倍にあたる、面積1614平方キロメートルという広大なもの。域内には、タスマニア最高峰であるオッサ山(Mount Ossa)(標高1617メートル)やクレイドル山(標高1545メートル)、オーストラリアで最も深い湖である水深190メートルのセントクレア湖などが点在する。一帯は、「タスマニア原生地域」の一部として世界遺産にも指定されており、その手つかずの大自然の美しさは、世界でもトップクラスといわれる素晴らしいもの。トレッキングの聖地として、オーストラリアはもとより、世界中から自然を愛する人たちが訪れる。時間と体力に余裕があれば、ぜひとも食料を担いで山小屋に泊まりながら数日かけて縦断する「オーバーランド・トラック(Overland Track)」にトライしたい。

ワイングラス・ベイ


透明感あふれる美しさや均整採れたその形から、まさに「ワイングラス」を思い起こさせるような「ワイングラス・ベイ」は、ホバートから北へ車で約2時間半。ロンセストンから南へ2時間半ほどで到着する。綺麗な三日月形をした美しいビーチは、一度目にしたら忘れられないほど印象的で、運よく、天気の良い雲一つない青空の日に訪れたなら、一生の思い出になること間違いなし。「世界のビーチ」のトップテンに入ったのも頷けるだろう。ビーチは、フレシネ国立公園(Freycinet National Park)内にあり、フレシネ国立公園の入口から、歩いて約2時間ほど。コールス・ベイ(Coles Bay)のキャンプ場から歩いてすぐの場所にある。釣りやセーリング、シー・カヤックのほか、ブッシュウォーキングやロック・クライミングなども楽しめる。

マウントフィールド国立公園

タスマニアに17ある国立公園の一つで、タスマニア最古の国立公園でもある「マウント・フィールド国立公園」は、ホバートから車で約1時間、距離にして70キロメートルほどの場所にある。階段状になった3つの滝の流れが美しい「ラッセル・フォールズ(Russell Falls)」や見上げるほどの背丈の巨大なユーカリの一種「スワンプ・ガム」の木々、ドブソン湖(Lake Dobson)やシェルフ湖(Lake Shelf)などが見られるほか、秋には、ブナの一種で、オーストラリアで唯一といわれる落葉樹「ファガス」が美しく紅葉する風景も楽しめる。運が良ければ、水が綺麗なところにしか生息しないという「カモノハシ」も見られるかも。

ポート・アーサー

かつて英国やアイルランドからの流刑地とされていたオーストラリアの中でもさらに最果ての流刑地といわれたタスマニア。ここポートアーサーには、かつて1100人もの囚人が収容され、鮫の泳ぐ海と厳重な警戒態勢により「脱獄不可能」とされた監獄のほか、そこに収監されていた囚人たちによって造り上げられたといわれる建造物が今も残っている。世界遺産にも指定された「オーストラリアの囚人遺跡群(Australian Convict Sites)」を構成するそれらの資産は、歴史に興味がある人のみならず、全ての人に一見の価値あり。タスマニアの中でもアクセスしにくいタスマン半島の先にある「最果ての地」も現在は、ホバートから車で約1時間ちょっとで辿りつけるので、日帰りも可能。途中にあるリッチモンドの村には、オーストラリア最古といわれる石橋「リッチモンドブリッジ(1823年築)」や、リッチモンド刑務所(1835年築)など、19世紀の雰囲気を感じられる遺跡、建造物が残っており、立ち寄りの価値あり。


リッチモンド・ブリッジ

スタンリー

タスマニアの北西部の海岸沿いにある街。ナットという火山のマグマが硬化することによってできたちょっと変わった長方形をした丘の麓にあり、ゴッドフリー・ビーチでは「リトル・ペンギン(フェアリーペンギン)」が可愛らしく歩く姿を見ることができる。

タスマニア内での交通

タスマニア島は、ハート形に近い逆三角形をしており、島のどこへも数時間のドライブで行くことができるのも魅力。世界遺産に指定されている自然エリアのほか、近年知名度を上げてきているタスマニア産のワインを生産しているワイン農家、そして、タスマニアのもう一つの大きな魅力である、伊勢エビ、ホタテ、カキなどの新鮮な魚介類やビーフなどの食材を使った料理を出すレストランなども点在している。公共交通機関はあまり発達していないので、レンタカーやツアーで巡るのがお勧め。

タスマニアへのアクセス

ホバートやロンセンストンへは、メルボルン、シドニー、ブリスベンの各都市から直行便が結んでいる。また、メルボルンとロンセンストンそばのデボンポートの間を結ぶカーフェリー「スピリット・オブ・タスマニア号」が一日一便運航している。

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