アジアヨーロッパ

コーカサスの美しい風景

コーカサス地方とは

「コーカサス」というと、「山がちな土地に多民族が住んでいるエリア」「長寿の人々」「美男美女」「ケフィア」はたまた「カブトムシ」といったような、ある種ステレオタイプ的、定番のキーワードを思い浮かべる方もいるかもしれないが、あらためて、コーカサス、またはコーカサス地方とは具体的にどんなところかご存じだろうか。

ロシア語ではカフカース(またはカフカス)と呼ばれるコーカサスは、ロシアやトルコ、イランなどと隣接する、カスピ海と黒海に挟まれたエリアで、標高5000メートル級の山々も連なる北側の大コーカサス山脈とそれを取り囲む低地、平原などからなる、面積にしておよそ44万平方キロメートルの地域のこと。国でいうと、いわゆる北コーカサス(北カフカス)と呼ばれる大コーカサス山脈の北側にあたるエリアがロシア( ※1)の一部、およびその大コーカサス山脈の南側の南コーカサス(南カフカス)に位置する、アゼルバイジャン、アルメニア、そしてジョージア(グルジア)(※2)となる。

ロシアやイラン、トルコといった大きな国に挟まれた山がちな地域に、ロシア人やウクライナ人、アルメニア人、アゼルバイジャン人のほか、古くから、カルトヴェリ人、ミングレル人、ラズ人、スヴァン人、アブハズ人、アバザ人、チェルケス人(アディゲ人)、チェチェン人、イングーシ人、アヴァール人、ラク人、レズギン人、クミク人、カラチャイ人、バルカル人、ノガイ人、オセット人といった、数多くの民族が生活していることでも知られ、かの「ロシア5人組」の一人で、ラヴェルなどにも敬愛されたバラキレフが、トルコ、イスラム系の諸民族の民俗音楽に接したのもこのコーカサス地方を旅行中の事。そうして書き上げられた曲の一つが彼の代表作であり、難曲としても知られる東洋的幻想曲「イスラメイ」だ。

地政学的な観点からいうと、このコーカサス地方は、ヨーロッパとアジア、ロシア、および中東を結ぶ重要なエリアであり、サファヴィー朝やオスマン帝国など、その時代の列強に支配されてきた。さらにはバクー油田に代表されるように、カスピ海沿岸部で石油(および天然ガス)の生産が盛んになった19世紀の終わり以降、主にヨーロッパなどの石油消費国への輸送ルートが存在するエリアとして、常に重要視され、注目されてきた。場所によっては、利権の争いと共に民族的な遺恨も絡み合い、複雑な情勢となっている。

とはいえ、自然環境や景観として見てみると、清浄な美しさや力強い荒々しさなどに溢れる絶景、美景の宝庫であり、多種多様な文化、色とりどりの衣装に彩られた様々な民族と相まって、旅人の「旅心」をこの上なく刺激してくれる地域でもあるのだ。

今日はそんなコーカサス地方の美しい風景、絶景をお届けします。

※1 ロシアの一部ではあるものの、実際にはイングーシ共和国、ダゲスタン共和国、北オセチア共和国、カバルダ・バルカル共和国、カラチャイ・チェルケス共和国、チェチェン共和国、アディゲ共和国などの国々。

※2 実際には、アブハジア共和国、南オセチア共和国、およびナゴルノ・カラバフ共和国など、ジョージアやアゼルバイジャンから独立を宣言している(事実上独立状態の)国々も含まれます。

コーカサスの風景

広告