ヨーロッパ

グリーンランドの風景

グリーンランドの首都ヌーク郊外のフィヨルドに面したイヌイットのカラフルな家々

世界一大きな島

ロシアはもとよりカナダ、アメリカ、中国、ブラジル、オーストラリア、インドなど、世界の国の面積ランキングの上位を占める国々と比べると狭い日本。「日本=小さな国」と思っている方も多いのではないでしょうか。日本の面積約37万8千平方キロメートルは、国の大きさ順に見ると世界で第61位の数値です。

そんな日本ですが、一方で、車や電車で日本国内を長距離移動したことのある方なら、「日本って意外に大きい」と一度くらいは思ったことがあるのではないでしょうか。

その感覚は、まんざら間違いではないのは世界地図をきちんと見てみるとわかります。上に挙げた、ロシアをはじめとする大きな国々が桁違いに面積が広いだけであって、例えばヨーロッパ諸国と比べると日本は意外と大きな国であることが分かります。

「日本が小さな国」と多くの人が思い込んでいるのには色々と理由があるかもしれませんが、その一つが、一般的に良く見かける地図が、1569年に地理学者ゲラルドゥス・メルカトルが発表した「メルカトル図法」の地図であること。地理の授業でも習った通り、この「メルカトル図法」は、赤道に近いほど縮尺に近く、南北に離れる程、実際の面積よりも大きく描かれます。

東京の緯度が北緯36度前後に対し、パリは北緯48度、ロンドンは北緯51度なので、ヨーロッパは日本と比較しても全体的に実際よりも大きく描かれています。さらに日本とヨーロッパは遠く離れていて、大きさを感覚的に比較しにくく、また、日本のすぐそばにユーラシア大陸がどん、と広がっていて、相対的に小さく見えてしまうのです。

ところが、あらためて日本の面積をヨーロッパ諸国の面積と比べると、日本が実は意外に大きな国であることが分かります。例えばイタリアは、約30万1千平方キロメートルで、北海道と本州を合計した面積(約31万1千平方キロメートル)より少し小さく、イギリスは約24万2千平方キロメートルで、日本の本州と同じくらいといった具合です。それは数値で見るよりも、実際に大きさを並べて比較してみるとさらにはっきりとわかります。

日本とヨーロッパの面積の比較

日本をヨーロッパと比較した実際の図はこんな感じ。

数字を見るよりも、リアルに大きさが比較できて、意外にも大きな日本に驚く人もいるのではないでしょうか。

グリーンランド

さて、前置きが随分と長くなりましたが、今日の主役は、「メルカトル図法」で描かれることにより、実に17倍ともいわれるほど実際の面積よりも大きく描かれてしまう場所「グリーンランド」です。

北緯59度50分から83度37分と、高緯度に位置するグリーンランドは、日本を真ん中にした地図であれば、右上(または左上)の端っこに広大な島として示されています。地図上ではオーストラリアよりも大きく見えてしまったりもしますが、実際の面積は216万6千平方キロメートルで、790万平方キロメートル近くあるオーストラリアよりもかなり小さいですが、それでも日本の国土の5.73倍もの面積を誇る世界最大の島です。

名前はメジャーながら意外によく知らないのが、このグリーンランドという場所ではないでしょうか。

実際に行ったことのある方や、興味があって調べたことがある方を除けば、地図に大きく描かれている「ナゾの島」という認識の方も少なからずいらっしゃるかと思います。「なんか寒いイメージの場所」という漠然とした印象しかない方も多いでしょう。今日は、グリーンランドの名前の由来と、人は住んでいるの?どうやっていくの?そもそもどんな所?といった情報を、グリーンランドの美しい風景と合わせてお届けします。

冬の早朝のタシーラク グリーンランド冬の早朝のタシーラク グリーンランド東部

グリーンランドの名前の由来

北緯59度50分から83度37分に位置し、国土の約80パーセントを氷床と万年雪におおわれた島「グリーンランド」は、年間の平均気温がマイナス1.2度という、多くの方のイメージ通りとても寒い所です。
そんな島がなぜ「グリーンランド=緑の土地」と呼ばれるのか、不思議に思う方も多いでしょう。この島が「グリーンランド」と呼ばれるようになった理由にはいくつか説があるのですが、その名付け親といわれているのは、アイスランド(ノルウェー出身説も有)の「赤毛のエイリーク」です。彼はアイスランドで農場などを経営する実力者であったそうですが、金銭がらみのゴタゴタにより人をあやめてしまい、アイスランドを追われてしまいます。そんな折、船でたどり着いたのが現在のグリーンランドでした。数年後に故国に戻った彼は、会う人々に自分の住む島の魅力を喧伝しました。そして、より多くの人に興味を持ってもらうために島の名を「緑の土地=グリーンランド」と呼んで話をしたのだそうです。彼の話を聞いて興味を持ち、その後実際に移住する人もおり、いつしか「グリーンランド」という名が定着したといわれています。(宣伝の為に誇張して「グリーンランド」と呼んだのみならず、当時のヨーロッパは気候が温暖な時期が続いており、実際に彼が住んでいたエリアは緑が多かった、という説もあります。)いずれにしても、その多くを氷におおわれた島が「グリーンランド」と呼ばれるようになった経緯、興味深いですね。ちなみにグリーンランドは18世紀頃にデンマークが領有を主張、デンマークの植民地となりますが、1979年に自治政府が発足、現在ではデンマーク本国と対等な立場の「グリーンランド自治政府」となっています。

グリーンランドに人は住んでいるの?

「赤毛のエイリーク」が島に行く以前にもすでにアメリカ大陸などから渡った先住民が住んでいたといわれており、982年頃に「赤毛のエイリーク」が入植して以降、アイスランドやノルウェーから人々が入植しました。ところが15世紀初頭頃に入植地は放棄され入植者は姿を消します。正確な理由はわかっていませんが、おそらくは小氷河期(夏の気温が現在よりも6~8度ほど下がっています。)による環境の変化ではないかといわれます。その後は、アラスカなどから渡ったイヌイット系の人々が定住、現在グリーンランドに住む人々の大多数はイヌイット系の祖先を持つカラーリットと呼ばれる人々と、北欧系のミックス、およびデンマーク人などとなっており、人口は5万6千人弱ほどです。

グリーンランドにはどうやって行くの?

グリーンランドへ日本から行くには二通りの行き方があります。まずはデンマークのコペンハーゲン経由、グリーンランド航空で行く方法。もう一つはアイスランドを経由してエアーアイスランドで行く方法です。コペンハーゲン経由の場合、接続の関係で往復ともにコペンハーゲンで一泊しなくてはいけません。また、アイスランド経由の場合は、アイスランド到着後、国際線と国内線の空港が異なりますので、バス移動が必要となります。

グリーンランドってどんな所?

日本の約5.7倍の大きさの面積を持つグリーンランドに暮らす約5万6千人弱の人々のうち、約1万8千人ほどがグリーンランド最大の都市で首都であるヌーク(Nuuk)とその近郊に暮らしています。そのほかの主な町は、

パーミュート(Paamiut)
カコトック(Qaqortoq)
カシギアングイト(Qasigiannguit)
ケケルタルスアク(Qeqertarsuaq)
シシミウト(Sisimiut)
ウペルナビク(Upernavik)
ウマナック(Uummannaq)
タシーラク(Tasiilaq)

など。ヌークの年の平均気温マイナス1.2度、7月の平均気温が6.8度と夏でも涼しい(寒い)所です。場所によっては厚さ3000メートルにもなる氷で覆われており、人々は主に沿岸部(特に西側の沿岸)に居住し、魚介類のほかアザラシやクジラなどを獲って暮らしています。島の最高峰はギュンビョルン山(Gunnbjørn)で標高3,694メートルを誇ります。

グリーンランドの首都ヌーク郊外のフィヨルドに面したイヌイットのカラフルな家々
グリーンランドの首都ヌーク郊外の街並み フィヨルドに面したイヌイットのカラフルな家々

グリーンランドの美しい風景

グリーンランドの西側ディスコベイに浮かぶヤコブスハウン氷河から流れ出た氷山グリーンランドの西側ディスコベイに浮かぶヤコブスハウン氷河から流れ出た氷山

首都ヌーク郊外の道首都ヌーク郊外の風景

グリーンランドのオーロラの風景グリーンランドのオーロラの風景

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